【映画レビュー】The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ (ネタばれ注意)

※あからさまなネタバレはしていませんが、ほのめかしは避けられませんでした。
​ 心配な方は、ご参照をお控えください。

[作品データ]

原題   The Beguiled
製作年  2017
製作国  アメリカ
配給   アスミック・エース、STAR CHANNEL MOVIES
上映時間 93分
映倫区分 PG12
[スタッフ]
監督   ソフィア・コッポラ
製作   ユーリー・ヘンリー
ソフィア・コッポラ
製作総指揮 フレッド・ルース
アン・ロス
[キャスト]
コリン・ファレル
ニコール・キッドマン
キルステン・ダンスト
エル・ファニング
[解説]
「ロスト・イン・トランスレーション」のソフィア・コッポラが、「めぐりあう時間たち」のニコール・キッドマン、「ネオン・デーモン」のエル・ファニング、「マリー・アントワネット」のキルスティン・ダンスト、「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」のコリン・ファレルら豪華キャスト共演で撮りあげた長編監督第6作。
1971年のクリント・イーストウッド主演作「白い肌の異常な夜」の原作であるトーマス・カリナンの小説「The Beguiled」を女性視点で映画化し、第70回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した。
南北戦争期のアメリカ南部。
世間から隔絶された女子寄宿学園で暮らす7人の女たちの前に、怪我を負った北軍兵士の男が現われる。
女性に対し紳士的で美しいその兵士を介抱するうちに、全員が彼に心を奪われていく。
やがて情欲と危険な嫉妬に支配されるようになった女たちは、ある決断を下す。

ソフィア・コッポラ監督は、本作を制作するにあたり、クリント・イーストウッド主演「白い肌の異常な夜」の影響を受けずに、トーマス・カリナンの原作を再映画化する、というスタンスで臨んだのだとか。
同じ出来事を女性からの視点で描いているとのこと。
そのためなのかは分かりませんが、誘惑を仕掛けたのは男性側という解釈になっているそうです。
「白い肌の異常な夜」は未見ですが、女性から誘惑したという内容なのかな?
どちらが先に誘惑したのかはさておき、本作が女性の恐ろしさを描いていることは間違いありません。
・マクバーニー伍長は、どちらかと言うと、ありふれた男性でしかない
コリン・ファレル演じるマクバーニー伍長は、南北戦争の北軍の逃亡兵です。
足を負傷した彼は、女性ばかりの寄宿学校(南軍側)で手当てを受けることになります。
寄宿学校の女性たち(生徒、教師、校長)7人全員が彼に夢中になりますが、それは戦争下という異常な状況のためで、実際の彼自身は、特に魅力があるわけでもなく、ごくごく普通の、大したことのない男性であるように思われます。
ただ、恐ろしい戦争を現実を目の当たりにして、戦場に戻りたくなくなった彼は、7人に気に入られようと、彼女たちの耳に心地のよいことばを、いろいろと囁きます。
スクリーンで客観的に見ていると、あまりにありふれた口説き文句にビックリなのですが、戦争中でほとんど男性と触れ合えていない彼女たちには、それで全然オッケーのもよう
思いの外スムーズに彼女たち全員に取り入った彼は、テングになっちゃうのですが、それが命取りになって、どんどん状況は彼の手に負えなくなっていきます。
そうなると、もともと大した人間でもないので、本性が出てしまうんですねー。
自らが招いたこととはいえ、彼の陥る状況は確かに気の毒。
しかしながら、本作は「女性目線」なので、彼は物語の起承転結のきっかけとか触媒程度のものです。
彼がどうなろうと、みんな知ったこっちゃないのです。
アーメン。
・マーサ校長には支配欲がある?
明からさまにマクバーニー伍長を誘惑する生徒のアリシア(エル・ファニング)とは違って、ニコール・キッドマン演じるマーサ校長が、彼に惹かれていたのかははっきりとは描かれていません。
しかしながら、寄宿学校を支配している彼女は、彼の身体も支配したいとは考えていたのかも。
マーサ校長の支配欲を示す行動はことあるごとに出てきます。
南軍の兵士がたまたま寄宿学校に立ち寄った時には、マクバーニー伍長がいる前で、彼を南軍に突き出すかどうかの多数決をとってみたり。
(多数決と言いながら、結局は彼女が彼の処遇を決めていた)
彼の脚が治りかけた時、出ていくように促しているようで、明言はせずに含みを持たせたり。
キルスティン・ダンスト演じる教師のエドウィナが、ディナーで肩を見せるドレスを着ていることに対して、「彼女は育ちが・・」とほのめかしてみたり。
彼がエドウィナと親しげに話していると、無言の強制力でお酒の相手に誘って、その会話の中で自分の育ちの良さをひけらかしてみたり、等々。
戦争下で少女たちを預かり、責任をもって教育をしている立派な女性でありながら、その一方で、マーサ校長は、自分の権力を行使して、その効果を実感するのが好きな人間でもあるように思えました。
最後の決断をした時のマーサ校長のにんまり顔は、彼女の本当の感情がいちばん表出した瞬間ではなかったでしょうか。
ニコール・キッドマンは、そんなマーサ校長の歪んだ部分を、さすがの演技力でユーモアを交えながら威厳たっぷりに表現しています。
・生徒たちの恐ろしいまでの団結力
生徒たちは、その良心に従って素直にマクバーニー伍長を助け、彼を受け入れ、敬い、また慕います。
1人だけ、年長のアリシアは、少し利己的な感じ。
最初は敵兵を看病することに反対し、その後は彼を誘惑して諸悪の根源となりながら、自分の非はひた隠す。
まあでも、こういう人は常にどこにでもいるので、仕方ないです。
彼女たちは、普段から、それぞれお互いに思うところがあるようですが、みんなの危機となったら一気に団結して、特に葛藤することもなく、恐ろしい決断をあっさりと下します。
一体、彼女たちはマクバーニー伍長のことを何だと思っていたのでしょうか。
人間なんですけど?
最後の晩餐で彼にお皿を回す時も、ワインを注ぐ時でさえ、まったく手が震えていません。
少女ならではの無邪気さと残酷さとは、げに恐ろしいものなり。
最後には、マクバーニー伍長を愛しているはずのエドウィナでさえ、寄宿学校の一員として、彼女たちの選択を意外とあっさり受け容れるのでした。
(エドウィナは成熟した女性というより、少女のまま大人になったみたいな感じ)
・まとめ
作中で、南軍の兵士が、「怯えた女性に銃を持たせるほど危険なことはない」と言ったそうですが、本作はまさに、その恐ろしさを描いているように思われます。
女性(たち)を過度に怯えさせることは危険です。何をするか分かりません。
その女性(たち)がもし、武器を持っていたなら、ためらわずにそれをふるうかも!
女性ではなくても、女性性のある男性も油断できないので、彼らを脅し過ぎないように、くれぐれも気をつけましょう。
少女性を描く能力に長けている、と言われているソフィア・コッポラ監督ですが、本作では、少女たちの残酷さに加えて、年齢を重ねた女性たちの悲哀も感じました。
画面のテイストは相変わらずミルキーで優しげながら、それが逆に後半の恐怖を盛り上げています。
自然光だけで撮ったという映像は幻想的で、女性たちのエプロンドレス風の普段着や晩餐時のイブニングドレスもかわいく、目を楽しませてくれます。
それでも、登場人物の短絡的思考さ加減に、少しうんざりしました。
マクバーニー伍長やアリシアやエドウィナのことも、マーサ校長くらい繊細に丁寧に描いてくれたらよかったのに、と思います。
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