【映画レビュー】クリムゾン・ピーク

[作品データ]
原題   Crimson Peak
製作年  2015
製作国  アメリカ
配給   東宝東和
上映時間 119分
映倫区分 R15+ 
[スタッフ]
監督 ギレルモ・デル・トロ
製作 トーマス・タル
ジョン・ジャシュニ
ギレルモ・デル・トロ
カラム・グリーン 
[キャスト]
ミア・ワシコウスカ
ジェシカ・チャスティン
トム・ヒドルストン
チャーリー・ハナム
ジム・ビーバー
[解説]
「パシフィック・リム」「パンズ・ラビリンス」の鬼才ギレルモ・デル・トロ監督が、「アリス・イン・ワンダーランド」のミア・ワシコウスカ、「アベンジャーズ」のトム・ヒドルストン、「ゼロ・ダーク・サーティ」のジェシカ・チャスティンら注目俳優共演で描くダークミステリー。
10歳の時に死んだはずの母親を目撃して以来、幽霊を見るようになった女性イーディス。
父親の謎の死をきっかけに恋人トーマスと結婚することになった彼女は、トーマスや彼の姉ルシールと一緒に屋敷で暮らしはじめる。
その屋敷は、冬になると地表の赤粘土が雪を赤く染めることから「クリムゾン・ピーク」と呼ばれる山頂にあった。
ある日、イーディスの前に深紅の亡霊が現われ、「クリムゾン・ピークに気をつけろ」と警告する。

「シェイプ・オブ・ウォーター」がアカデミー賞を受賞した影響か、デルトロ監督の「クリムゾン・ピーク」がNetflixで新着配信になったので、早速、鑑賞しました。
映像も美術も衣装も全てうつくしい上に、キャスティングまで完璧という稀有な作品です!
でも、完璧である分、個人的な残念ポイントが際立ってしまうという悲しい点もありました。
それはラストの展開と幽霊の造形、そして、色です。
良いと思った点、残念な点について、​ひとつずつ書いてみました。
【美術、衣装、映像の全てが、うっとりとする程のうつくしさ】
物語は、前半のアメリカ編と後半のイギリス編で構成されていますが、特に、後半に登場する「クリムゾン・ピーク」に建つ「アラデール・ホール」という半分朽ちたお屋敷のゴシックホラーな内装が素晴らしいです。
このお屋敷は、玄関の扉を開けると、玄関ホールが天井まで吹き抜けになっています。
そのホールを取り囲むように各階の回廊があり、さらにそこから放射状に廊下が伸びていて、各部屋につながる、という造りです。
(ディズニーシーのホテルミラコスタのエントランスと同じ造りです。分かりにくい例でごめんなさい)
でも、お金がなくて十分な補修が出来ていないため、吹き抜けの天井が破れてしまっており、そこから風が吹き込むので邸内は寒いし、落ち葉・雪などもゆらゆらと舞い降りてきています。
薄曇りの光の中に、ゆっくりと静かに舞い落ちる落ち葉や雪は、それだけでロマンチック。
実際に住むには良くない環境と言えましょうが、ゴシックホラーの舞台装置としては最高です。
(この破れた天井の吹き抜けは、物語の展開上でも重要な役割を果たしています。)
俳優さんたちのコスチュームも全て豪華で、色に特徴がありました。
ミア・ワシコウスカ演じる主役のイーディスは、明を暗示する黄色い衣装。
ジェシカ・チャスティン演じるルシールには、ダークな色合いの衣装を多用して、キャラクターをさらに際立たせています。
幽霊は夜に出るので、寝間着のシーンも多いですが、イーディスはのどまできっちり隠れた、繊細なレースがふんだんにほどこされた可愛らしいネグリジェ
一方のルシールは、肩が露出した色っぽいナイトドレスに、ビリジアングリーンの肩掛けでダークな差し色をしていました。
この肩掛けの色が、ジェシカ・チャスティンの目の色とマッチしていて、とてもきれい
日中はまとめている髪を、夜はおろしているのも、雰囲気が全く変わって、妖艶でした。
【見た目も演技も完璧なキャストの皆さま】
ミア・ワシコウスカは、透明感と芯の強さが同居する容貌に加えて声もかわいく、イーディス役にぴったり。
オープニングとラストでクローズアップされる、ガラスのような水灰色の目に引き込まれそうになります。
写真だと、顔の四角さがどうしても気になっちゃうのですが、映像ではほとんど気にならないのも不思議。
トーマスを演じるトム・ヒドルストンはこの作品が初見でしたが、憂いがあって貴族的なのに線が細くなくて、神経症ぽくも退廃的でもないのがよいです。
ひとめぼれといいますか、あまりにもステキすぎて、トーマスの弱さを見逃しそうになるくらいでした。
​たいへん私事ですが、好きになる俳優さんはイギリス人が多いです。好みなんでしょうなー
これからは、トム・ヒドルストンの出演作品もチェックしていきたいと思います。
いちばん印象的だったのが、ジェシカ・チャスティン。
見るたびに違う人に見えるのが不思議で、アゴが割れているのにすごくきれい(褒めています)。
今回は、抑えた演技と笑わない目で、静かな狂気を表現していました。
次にアカデミー賞をとってほしい女優さんナンバーワンです。
3人それぞれが、ぱっと見ではそこまで役にマッチしているわけではないのに、立ち振る舞いや演技で完璧に合わせていることが素晴らしい。
【幽霊が怖くないという困った事態に】
構成している映像や演出、俳優さん全てが完璧ながら、というか、完璧だからこそ、物語の展開には、少し不満があります。
クリムゾン・ピークのお屋敷でで待つ秘密は、特に目新しいところもなく(勿論うつくしくもない)、予想通りの展開です。
その点には何の不満もないのですが、問題はそのあと。
ネタバレになるので詳しくは書けないですが、なんだか短絡的過ぎる展開だったので、もう少し男性たちが活躍してくれてもよかったかも。
そして、幽霊たちについて。
物語の雰囲気とマッチさせるためにいろいろ試行錯誤したのかもしれませんが、もっとデルトロ監督ならではの造形があったらよかったような気がします。
幽霊には目がなくて、その表現を使えなかったのが、デルトロ監督には痛かったのかも。
(この作品でも、「シェイプ・オブ・ウォーター」でも俳優さんやクリーチャーの目がとても印象的だったので)
ちょっとムンクの「叫び」を連想させる感じで、恐ろしさよりもシュールさが勝ってしまっていました。
冒頭に出てくるお母さんの幽霊も、お母さんなのにあれはないでしょ、と思ってしまうし・・
【そういえば、「クリムゾン」って何色?】
タイトルの「クリムゾン・ピーク」の「クリムゾン」の色合いを、勝手に「血の色」だと思っていました。
「血の色」で真っ先に思い浮かべるのは、日本人形が流す真っ赤な血の涙なのですが、本作の血は、真っ赤ではないです。
少しえんじ色がかっているような感じ。
クリムゾン・ピークは、その土に含まれる粘土が赤くて、雪が降っても白色を赤く染めてしまうからそう呼ばれている、という設定です。
でも、映像が少し暗めだからか、真っ赤ではないため、そこまでホラーぽくなく、その点がさらに、本作を格調高くしています。
多分、普通のホラー映画は、暗い中での血を際立たせるために、赤のコントラストを強調しているのでしょう。
(直近で観た「ビガイルド」でもそうでした。スリラーですが)
本作では、雰囲気に合わせて、落ち着いた色合いになっていますが、その分、恐ろしさが半減していることは否めません。
カメラが引いた、全景での、クリムゾン・ピークが雪が染まっているようすは文句なく素晴らしいのですが、問題は、同じえんじ色が幽霊や地下倉庫の液体にも使われているところ。
あれだけの量が本当に鮮血色だったら、スプラッタ過ぎて見ていられないかもしれませんが、それにしても、ただの絵の具かペンキのように見えてしまって、恐怖が醒めてしまうのでした。
【まとめ】
完璧すぎるからこその残念な点もありましたが、本作は、これまでに観たゴシックホラーの中で、「スリーピー・ホロウ」と並ぶ傑作です。
特に、「建物もの」として、その造形や光のバランスなど、至るところに気を遣って撮影されたことがひしひしと伝わってきます。
​絵画の連続のようにうつくしい、文字通り陶酔してしまうような映像が続きます。
あまり細かいことは気にせず、監督の本作に対する熱愛を感じながら見るのが正解と思います。
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