【BOOKレビュー】パディントン発4時50分 (※ネタばれなし)

【作品データ】

原題  4.50 FROM PADDINGTON
著者  アガサ・クリスティー
発行年 1957年
訳   松下祥子
【あらすじ】
=== Amazonより抜粋 (ここから)===
ロンドン発の列車の座席でふと目をさましたミセス・マギリカディは窓から見えた風景に、あっと驚いた。
並んで走る別の列車の中で、まさに背中を見せた男が女を締め殺すところだったのだ……鉄道当局も警察も本気にしなかったが、ミス・マープルだけは別だった!
シリーズ代表作。
=== Amazonより抜粋 (ここまで)===

タイトルから漠然と時刻表ミステリー(西村京太郎トラベルミステリー的な)かと思っていましたが、全然違いました。
この本を手に取った理由は、今度、テレビ朝日でドラマ化されるため。
アガサ・クリスティーは、エルキュール・ポアロものは全作読んでいますが、ミス・マープルものは短編以外読んだことがありませんでした。
今回読んで知りましたが、ポアロの場合、ほぼ全編に渡って出ずっぱりが多い一方、ミス・マープルは要所要所にしか登場しません。
「パディントン発4時50分」では、ミス・マープルのお友だちであるミセス・マギリカディが車窓越しに殺人を目撃したことが
きっかけで捜査に乗り出すことになりますが、高齢で好きに動き回れない彼女の代わりに、スーパー家政婦ルーシー・アイルズバロウという女性が現場で活躍。
ミス・マープルはまさに「安楽椅子探偵」で、彼女や警察の報告を聞いて推理を展開するという流れになっています。
(犯人を告発するラストには、現場へ登場)
この作品ならではの特徴は3つ。
1つ目は、殺人の起こる場所です。
目撃者のミセス・マギリカディは、自分の乗った列車を追い越す列車の中で、女性が男性に首を絞められているのを目の当たりにします。
電車に乗ったことのある人なら、自分の乗った列車が他の列車とすれ違う時の不思議な感覚は、すぐに思い起こすことが出来るのではないでしょうか。
2つの列車が並んだ時の、まるで列車が止まっているかのような感覚。
その間、相手の列車の中はよく見えますが、だんだん速度が変わって追い抜き追い抜かれ、それきりです。
その時、この作品のように、相手の列車の中で殺人が起こっていたら、それはまるで別世界の出来事のように見えることでしょう。
テレビや映画を見ているかのような、まるで現実感を欠いたシーンに感じるのではないでしょうか。
この1つ目の特徴から、この作品は映像化にとても向いているのではないかと思いました。
ドラマでどのように描かれるのか、楽しみです。
2つ目は、ルーシー・アイルズバロウという存在。
彼女はスーパー家政婦さんです。
作中によると、当時のイギリスでは、深刻な使用人不足だったそうです。
そのため、有能は家政婦さんはたいへん貴重な存在で、大金を払ってでも我が家で働いてほしいというおうちは後を絶たなかったとか。
そんなわけで、ルーシーは、死体が隠されているとミス・マープルが睨んだクラッケンソープ家のお屋敷に、表の顔は家政婦(本業)、裏の顔は内偵(素人)として潜入するのでした。
よく考えてみると、これは「家政婦は見た!」テイストで、日本では(?)あまり物珍しい感じはしないかもしれませんが、個人的には、ルーシーが実際は学者にもなれるくらい賢いのに、家政婦という職業を選択したという設定が好きです。
日頃、家事に汲々としている主婦としては、家政の切り盛りを上手に行うにはそのレベルの知能が必要だと言ってくれることが、励ましのように思えて、うれしいですね(笑)
3つ目はこの作品の特徴というよりは、クリスティ作品の特徴と言った方がいいかもしれません。
クリスティの作品は、感傷的というのではないですが、たいてい、恋愛要素が盛り込まれています。
この作品でも、ルーシーに言い寄る男性がなんと4人も!
また、トリックや動機が主眼ではなく、登場人物の性格の機微を描くことに重きが置かれているのもクリスティの特徴ですが、マープルものでは特にその点が目につきます。
ミス・マープルの持論は、人間はどんな階級でもその性質は似たり寄ったりであり、類型化できるというもの。
誰かに会うたびに、「あなたはわたしの知っている誰々を思い出させますね」が口癖で、実際、彼らは同じことをするようです。
(例えば、奥さんを殺すことをためらわない夫とか、ミス・マープルは会って話しただけで、初対面でも分かる)
マープルものは、そういうミス・マープルのキャラクターになじめるかどうかで好き嫌いが決まりそうです。
私は、ふわふわした白とピンクのおばあさんが、実際は、人間の本質的な醜さに精通しているという設定も、人間というものの本質は、田舎でも都会でも、中流家庭も上流家庭も変わらないという提議はとても好きなので、にこにこしながら読んでいます。
以上の3つが主な特徴で、動機やトリック的なお話はあまり深くないですが、その分、注意深く読んでいれば犯人が分かるのもよいところ。
あまりにも難しいトリックやトンデモな動機だと、考える気も失くして、ただ話を追うだけになってしまいがちですが、この作品はそんなこともないので、伏線を拾いながら丁寧に読むのがいいと思います。
クリスティはフェアなので、必ず、あれ?おかしいな?と思ったところが、やっぱり!に繋がる爽快な気持ちをお約束します。
気になったのは、ルーシーが最後に結ばれる男性が明らかになっていないところ。
ミス・マープルはもちろん、分かっているようなのですが、作中では教えてくれません。
どちらの男性なのか・・、もしかして、ドラマでひとつの回答を示してくれないかと期待しています。
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明日はもう一つの作品「鏡は横にひび割れて」の感想を書きたいと思います。

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